[ 船日記 ] 貨物船と漁船

船乗りといえど、別世界

夫が船乗りをしている、と言うと

ほぼ間違いなく、「漁師?」と聞かれます。いいえ、違います。航海士です。

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じつは…航海士と漁師さん…あまり仲良しでは…な…(いや、なんでもない)

航海士と漁師は全く違う仕事です。

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簡単に言うと、

・航海士は会社の船に乗るサラリーマン。(外国行き・国内行きでかなり勤務形態が違う)

・漁師は自分の船にのる自営業。(雇われの場合もある)

ちなみに国内航路(内航船)だと長距離トラックの海版てな感じのよう。

我が家の夫は外国航路(通称:外航船)に行く船乗りです。世界中の港に荷物を届けます。

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サラリーマン船乗りは自由に海原を駆け抜ける…ことはできません。次の行き先は会社から、メールとかで連絡がきてます(笑)

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「とりあえず西に向かってちょ。次の港は決まったらお知らせするわ〜」なんてことも、本当にありました。

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船にいても、基本は陸からの指令に従うサラリーマンです。

 

一方、漁師さんは、自分の船さえあれば、悪天候の日に船を出すのか出さないのかなど、自分で決められることが多いです。

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ある日、神戸の港町でカレー屋さんで漁師さんと遭遇して、カレーをごちそうになったことがあります。たまたま(笑)

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その時、大雨の中も気合で船を出した、という話を聞いた記憶が。

海藻まみれになった写真を見せてもらって、スゲー!と素直に思いました。

漁師町で、航海士の嫁とは言えない。

いやこれ、マジです。内陸で船乗りがいない町なら珍しがられます。奈良にいる時は堂々と言ってました。近所の人にも。

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しかし、今住んでいるのは瀬戸内の漁師町。

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漁師さんが多いので、あまり貨物船乗りが夫とは言えね〜。

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なぜって?

貨物船と漁船のトラブルが少なくないからです。

 

巨大な貨物船と、小さな漁船。

それは大型トレーラーと、歩いている人以上に、大きさの違いがあります。

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貨物船は小回りがきかないから、漁船にぶつかりそうになる。漁網をひっかけてしまう。漁船にどいてほしい。

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逆に、漁船は地元で魚をとっていたら、大きな船がドカドカとやってくる。まるで路地裏にトラックがやってきたみたいな。

私は実際に操船しているところに立ち会っていないので、なんとも言えません。

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貨物船が漁船と衝突して、漁船が転覆する、という事故が、時々、あります。

小さな船の方が犠牲になられることも、あったりします。

ものすごく、ものすごく、心が痛い。ものすごく、悲しいです。

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夫は大きな船に乗っているけど、もしも、もしも立場が逆ならばと思うと、胸がつまります。他人事ではありません。

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グローバル vs ローカル

大型貨物船と漁船の衝突は、グローバルとローカルの衝突のようにも思えます。

おいしい魚を食べられるのって、本当にすごい事と改めて思います

大型貨物船は、グローバル社会の縮図です。

たとえ日本の会社の船でも、いろんな国がからんでいます。

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税金対策の為、船の国籍がパナマ、マーシャル、などの国に。

乗組員は、人件費の安いフィリピンや中国、東欧、ロシアなどから。

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万が一事故が起きてしまったら、日本の本社の人が駆け回ります。

一方、漁業を営む人は超ローカル社会です。

代々続く漁師さんも多い事と思います。(貨物船乗りの中には、先祖が漁師という人も結構いたりします)

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ここ明石では、いっぱい漁船が港に係留してあります。

朝の漁協はセリで賑やかです。魚の棚商店街では、魚がピチピチ跳ねています。

魚が、地元の景色になっています。

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万が一、漁船が事故にあったら。誰が生活を保証するのか。

自分の身一つで生活する、それは自由と責任を両手に握りしめることやな、

と漁師さんを見ると思います。

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儲かる時は儲かるようで、明石港の近くには漁師御殿もそこそこ建ってます(笑)

その分、厳しい仕事だと想像します。

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どちらが良くて、どちらが悪い、ということはないと思います。

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同じ海の上に浮かんでいる船どうしだけど、全く違う世界がその上にあって、

時折複雑な気持ちになります。

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行き交う船が浮かぶ明石海峡は、いい景色です。

どうかどうか、少しでも事故が少なくなることを祈るばかりです。

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2019年も。船の世界が、貨物船、漁船ともに、栄える事を願っています。

ご安航を祈ります。