
パソコンから発掘された、去年の小笠原旅行の日記・エッセイ版です。おうちで小笠原の空気をどうぞ!
- (前回までの話)日記で小笠原旅行 vol.1
波にゆられて眠ったら、気づけば5時間も寝ていた。窓から海が見えて、あぁ、船旅をしているのだ、と実感する。とりあえず顔を洗って、外に出てみると曇り空が晴れている!
海が本当に真っ青で、絵の具の青はこの色を模したのかと思った。カツオドリも風に乗って飛んできた!海風が気持ちいい。
船は時間も景色も、グラデーションのように流れていく。そのゆるやかさが、とても心地良い。
デッキでガイドさんによる鳥の解説などを聞いていたら、あっという間にあと少しで小笠原諸島・父島。急いで荷物をまとめる。なかなかまとまらない。慌ただしくしているうちに、船がゆっくり港に入っていく。
ふと気がついて窓のほうを見ると、くっきりと島が目に入って
思わず「おぉ~!」と声を上げる。切り立つ断崖。鮮やかな緑。ここは日本だけども日本じゃないような景色。
はじめまして、父島。ムッとする暑さに包まれてくる。
桟橋にはたくさんのお出迎え。おおらかな南国ムードいっぱいで、長旅の疲れが一気にほぐされてしまう。島で見るおがさわら丸は、東京にいる時よりずっとずっと、大きく見えた。
この船に携わることができた嬉しさが、ずっとずっと大きくなって、こみあげる。

船のタラップを降りて、しばらくぶらぶらと歩く。
とにかく、緑が濃い。ハイビスカスやタコノキ、ガジュマルが鬱蒼と茂っている。
昨日の雨で濡れた地面は、粘土質の赤土。サンダルの裏にひっつく感触が、いつもと違う。険しい断崖が、大自然の力を見せつける。崖を青い海が削る。海風がぼうぼうと吹いて、帽子が飛びそう!

地図やガイドマップで見ていたよりも、父島の街自体はずっと小さい。
小さいけれども、不思議な活気がある。百聞は一見に如かず、とはよく言ったもので、来る前と来てからでは、地図の見え方がまったく違ってくる。これが旅の醍醐味だなぁ。
島には小さな宿しかない。でも、そこがいい。
宿泊するのは島内唯一のホテル、とい聞いていたけど、到着してみると小じんまりとした、かわいいホテルだった。なんだか落ち着く。
綺麗な浜辺のそばに建つ、大きなリゾートホテルも、バカンスにぴったりで楽しい。
でもどこかで、おおらかな海の前に、ドーンと巨大でピカピカなホテルが建って、中で働く人とも、とくに接点のないまま、建物の中でこもって過ごすのはちょっと不思議だな~と感じていた。それはそれで楽しいのだけど、なんだか寂しかった。
「もっと良くしよう」「もっと便利にしよう」というモチベーションが、
いろんなものを生み出してくれているし、私だってその恩恵を浴びている。(amazonだって超愛用してる)でも、じつは必要なものって、そこまで多くないんじゃないか。そんな思いが湧いてくる。
疲れるのは、頑張って走ろうとしてたからで、歩くスピードでも全然いいんじゃないか。宿もお店も、どれもほとんど顔の見えるものばかり。それはそれで、住んでいたら色々あるのはよくわかるけど、今ここに来て、なんだか落ち着く。
日頃街中で、ずっと、モヤモヤしていたのは、何か寂しいなぁと感じていたんだと思う。
とにかく父島の、この小さなサイズ感に、ものすごくほっとする。
(続きます)